音信不通になった兄パブロ。不安になる代理人・木村
日本サイドの意向を伝えようとしても、パブロの携帯電話は常に留守電状態で、メールへの返信もない。キーパーソンが突如として音信不通状態となった矢先に、フォルランがプレミアリーグのウェストハムと交渉しているというニュースがインターネットに掲載された。
木村は不安に駆られる思いを正直に佐々木へ伝えた。
「上手く事が運べば御の字という話なので、もうちょっと辛抱して待とうという内容のメールを佐々木さんからもらったときは、すごく救われた気持ちになりました。普通はその時点で潰れていてもおかしくはありません。佐々木さんと岡野さんというトップの方々が率先して進めていたからこそ、継続となったのだと思います」
実際、パブロはメキシコやアメリカのMLSのチームとも接触を持っていた。資金が潤沢な中国スーパーリーグのチームが浮上したこともあった。パブロから再び連絡があったのは、11月10日前後だったと木村は記憶している。メールの文面にはこんな言葉が綴られていた。
「いまのオファーを前に進めたい」
他チームとの交渉が不調に終わったことは容易に察しがついたが、木村はあえて不問に付した。正式な交渉に臨むためには、はっきりさせておかなければいけないことがある。木村は急いで佐々木にメールを送った。
「そろそろ日本のチーム名を教えてください」
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