フォルランへのアプローチは飛び込み営業
木村は2013年10月初めにブラジルへ渡った。実はフォルランにつながる当ても何もないまま、まさに徒手空拳状態でサンパウロ市内のホテルに長期の予約を入れた。
「皆さんが聞いたら意外に思われるかもしれませんけれども、いわゆる飛込み営業です。とは言っても、直接押しかけても会ってくれるものではありません。まずはフォルランとインテルナシオナルをつないだブラジル人とコンタクトを取りました。その人間を通じて、フォルランサイドに『ぜひとも会いたい』とメッセージを送ったわけです」
どんな状況になっても迅速に対応できるように、木村はホテルの一室からほとんど外出しなかった。パソコンで業務をこなし、食事のほとんどをルームサービスでまかなう生活が3週間ほど続いた10月25日に事態が動いた。
間に入ってもらったブラジル人から、フォルランサイドが会いたがっていると緊急の連絡が入った。フォルランが住んでいたポルト・アレグレまでは、サンパウロから南へ空路で約1時間半の距離にある。W杯が開催されたベイラ・リオ・スタジアムに隣接するホテルでは、フォルランと兄のパブロが待っていた。
木村は当初ブラジル人に対してFIFA公認選手エージェントという自身の肩書きのみを伝え、肝心の要件は伏せていた。それでも、日本人がわざわざ会いにきたという点に、フォルランは大きな関心を持っていた。
「ディエゴは過去に4度来日したことがあり、そのたびに清潔で、礼儀正しくて、時間に厳守なお国柄に大きな感銘を受けたそうなんです。南米の中でもブラジル人はかなり時間などにルーズなんですけれども、ウルグアイ人はその点で非常にしっかりしている。インテルナシオナルでの年俸や残されている契約期間を尋ねると、大概のケースでは曖昧にされるところを、彼らはすべて正直に答えてくれた。最初から興味を持ってくれた感じでした」