アグエロへの喝采。傷ついたプライド
両スター選手の関係は時の流れとともに変化していき、緊張が走ったことも多々あった。それでも両者はプロフェッショナルとして振る舞い、好意や嫌悪といった感情を越えて、稀有な才能を持つチームメートとして互いを評価し合っていた。少なくともピッチ上の関係は、持ちつ持たれつであったと形容できるだろう。
彼らが険悪な雰囲気を醸した根本的な原因。それはアグエロがカルデロンの人々から愛情を注がれていたことを、フォルランが快く思っていなかったためだ。ウルグアイ人は自身の方がアグエロより多くの得点を記録し、タイトル獲得においても決定的な仕事を成し遂げたにもかかわらず、観衆の喝采がアルゼンチン人FWの動き出し、ドリブル、閃きに向けられることを理解できなかった。
フットボールはストライカーにとってエゴイズムのスポーツであり、アトレティコの2枚看板はそのために相容れなかったのである。ファンによるアグエロ崇拝は、スペイン到着直後からスター選手として扱われていたフォルランのプライドを傷つけた。助演男優は、受け入れられる役割ではなかった。
フォルランはロッカールームでアグエロ以外の人間とも立ち向かわなければならなかった(編注:例えばレジェスは「ブロンドにはボールを出すな」とチームメートに伝え、ゴディンが加入してくるまでフォルランの友人はシモン・サブローサしかいなかった)。何より、彼のスポーツ面における功績に光を当てないのは、不当以外の何物でもない。
アトレティコで背番号7をつけたこの男は、2008、2009年のチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得、さらには2010年のヨーロッパリーグ(EL)優勝、UEFAスーパーカップのインテル戦勝利に貢献し、ロヒブランコがエリートクラブに戻る鍵を握った。
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