カギを握るアラバの存在。ペップの完成図が描かれるのはまだ先か
ゲッツェのゴールの後に、バイエルンにはちょっとした変化が見られた。バトシュトゥバー、ダンテ、ボアテングの3バックが右にスライドし、左のウィングバックのベルナトが少し降りてきて、4バックの形をとった。
バトシュトゥバーとダンテの両CBの前に、アラバとラームがボランチとして構え、2列目にゲッツェ、ミュラー、シャキリ、そして最前線にレヴァンドフスキである。
ボアテングはブラジルW杯を戦った際に、ドイツ代表で右SBを務めたので、このスタイルにすんなり順応してプレーしていた。ダンテとバトシュトゥバーも比較的プレーし易かったようだ。
後方からバイエルンは安定し、相手を押し込み始めた。29分ミュラー、52分アラバ、73分ピサロと着実にゴールを奪っていく。
布陣とは別に、ミュンスター戦で特徴的だったのは、ボランチとしてのアラバだ。昨季は主に左SBとしてプレーし、試合中には流れの中でインサイドハーフのポジションにも入ったが、この試合では当初より中盤でプレーした。
もともとがSBの選手なので、バランス感覚には優れている。バトシュトゥバーが上がった際に、後ろに戻ってスペースを埋める動きを見せる。
また、ボールを奪った瞬間の味方へと繋ぐ能力も優れ、自身はSBとしての推進力で前方へと力強く上がることが出来る。52分のようにミドルレンジからの得点を狙うことも出来る。ミドルレンジからの得点能力は、引いて構える相手に対してやはり有効と言えるだろう。
もちろん本職はSBなので、中盤の底でボールを引き受けて正確に散らして繋いでいく能力は、例えばラームのそれに比べると、かなり見劣りはする。
対ミュンスター戦で見ることが出来た「スライド式の3バック+ボランチとしてのアラバ」は、ひとまず力関係の弱い相手であれば、押し切ることが出来そうだ。
もっとも、ペップは試合後にまた「我々はまだなお時間を必要とする」とも語っているので、2季目のペップ・バイエルンはまだまだ基礎工事を進めている段階なのだろう。ラームも試合後に「我々はまだ100%の状態ではない」と語った。
ペップの頭の中にある完成図がピッチの上に描かれるのは、まだ先のことのようである。
【了】