ギャップと摩擦が財産になる
日本代表がメキシコ流を短期間で修得できるなら、それは嬉しい。日本サッカーの引き出しが増えるということは、私がアギーレ氏の登用に期待する部分でもある。ただ日本と近くて遠いのが、彼らのスタイルだとも思っている。アギーレ氏は国際的なキャリアを積んだ人物なので、安易なコピーはしないだろうが、そこで何かしらの衝突は起こるだろう。
「誰がトップ下をやる?」「本田圭佑と香川真司の扱いがどうなる?」といった“俗受け”するテーマに私はあまり興味がない。私が期待半分、不安半分で待っているのは“異文化との葛藤と受容“という、スリリングなチャレンジだ。
準備の過程では、トラブルが多くてもいい。日本とアギーレ氏が不本意な形で訣別しても、それは決して異常事態ではない。むしろ4大会連続で(オシム氏の病気による退任はあったが)監督を途中解任しなかったという“無風状態”が異常事態ではなかったか。サッカーの世界では、中途の退任が日常茶飯事だ。
サッカーの“中身”について我々がストレスを感じられるのは、むしろ幸せなことだと思う。ストレスとリラックス、緊張と緩和の繰り返しこそがスポーツの醍醐味であり、中毒性だからだ。アギーレ氏には我々に疑問符を投げかけるような、時に苛立たせるようなアグレッシブさを期待したい。そうすれば日本サッカーを巡る議論は活発になるだろうし、メディアだって盛り上がる。
日本代表に可能性があるか、W杯ロシア大会で勝てるかというテーマは、選考と試合を見てから語ろうと思う。しかしアギーレ氏と日本の“ギャップ”が引き起こすバトルは、きっとこの国に何かを残してくれるはずだ。
【了】
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