「1ゴールを決める為には、チーム全員の協力と戦術的な準備が不可欠」
細かくは分からないが、モイーズ前監督からヤングに対して「ファン・ペルシーをターゲットにしてクロスを狙え」と指示があっても、チーム全体でイメージを共有できていなければ質の高い攻撃など無理な話だ。
こうしてヤングは“クロスマシーン”と化し、チームにも明確な攻撃の形がないためにパスは繋がらず、選手のポジショニングが重複し、単調な攻撃を繰り返すしか無くなっていった。
しかし、ファン・ハール監督に率いられたICCではこの問題が一気に解決。ルーニー、マタ、エレーラの連係も良く、ワンタッチでのパスから相手DFラインを崩すなど中央から効果的な攻撃が出来ていた。
そのため、サイドにヤングがプレーするためのスペースが生まれ、中央の選手が適切な距離でポジション取りをしていることでクロスの狙い所もはっきりとした。
3バックと言えば、守備的なフォーメーションと見られがちだが、ファン・ハールの3バックはDFラインの位置が非常に高い。これは全体をコンパクトに保つためで、そうすれば守備から攻撃へ、攻撃から守備へ素早く切り替えることが可能となる。
さらに、中央が機能することでサイドが生きる、サイドが機能することで中央が生きる。
ファン・ハール監督は、かつて「1つのゴールを決める為には、チーム全員の協力と戦術的な準備が不可欠だ。ピッチ上では、選手それぞれが仲間がどこに居るのか理解している必要がある」と語っているように、11人全員が連動するサッカーを実践している。
選手それぞれの役割が明確になり、ポジショニングも的確だと試合を見ていてもシンプルな印象を受け、ゴールも簡単に決まるような感覚になる。しかし、それこそが最も難しいことであり、監督の力量がものを言う部分だ。