最後まで覆すことが出来なかったピッチ上での“異物”という状況
結局のところ、大久保はこの短い期間で、周囲とのコンビネーションを確立することが出来なかったのかもしれない。そもそもサイド志向の強いザックジャパンのチームのビジョンと、一見して空いていないようでも「中が空いている」と感じる大久保ではビジョンに開きがあったのだ。
「(自分と同じスペースが)みんな見えていると思うし、そこは心配していない」
そう語っていた大久保だが、少なくとも見え方、感じ方に“ズレ”があり、大久保もそこに仲間たちを引き入れることが出来なかった。最後に滑り込む形でW杯メンバーに加わった大久保はピッチ外でも積極的にコミュニケーションを取り、チームの雰囲気を盛り上げようとした。
なかなか調子が上がらない柿谷曜一朗や香川真司にとっても大先輩の存在が心の支えになっていた感もある。コロンビア戦を前に大久保は、香川と卓球をしたエピソードに触れて「(卓球で負けたのは)わざとわざと。あいつ、すぐ落ち込むからね。でも乗ったらスゴイヤツだよ。コロンビア戦はきっとやってくれると思う」と語っていた。
チームにとって頼れる存在となった大久保であったが、短い期間で先発を任されるまでになったピッチ上では“異物”のままだった。ザッケローニ監督はそこに期待したのかもしれないが、ここで重用するならば、もう少し早くチームに組み込んでも良かったのではないか。
愛着のある13番を背負い、W杯を「楽しめています」と語っていた大久保だが、自分の持つ力をチームに活かしきれなかった思いは強いようだ。
大久保は4年後に36歳となる。一般的に考えれば日本代表の第一線で戦うには厳しい年齢だ。だが本人は「出来ることはわかったし、自分からやめるつもりは全くない」と語る。
ブラジルの地でやりきれなかったこと、その中で感じた日本の可能性。それらを仲間たちと世界の舞台で描くために、大久保は再び日の丸を目指す。
(『フットボールチャンネル03』(8月5日発売)より)
【了】
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