自分の得意とするパターンへのイメージが共有出来なかった
3試合に出場して203分間プレー。9本のシュートを放ったが、得点を記録することは出来なかった。昨年のJリーグ得点王である大久保嘉人は、今年も開幕から好調を続けていたため、大きな期待を集めていたが、W杯では期待外れに終わってしまった。
積極的な攻撃姿勢を持つ大久保は対戦相手にとって危険な存在であったことは間違いない。ではなぜ彼は、無得点で大会を終えることになってしまったのか。
あと少しでゴールという惜しい場面はいくつかあった。特にギリシャ戦では何度もペナルティエリアの手前でファウルを受けたし、長友のクロスに飛び込んで合わせるシーンなどもあった。
コロンビア戦においては右サイドを深くえぐった内田のクロスに飛び込んで右足で合わせにいったが、うまくミート出来ずに外れてしまった。
「ボールが浮いていたので振りぬかず、インサイドに当てようと思って。最後の最後でバウンドが浮いてしまった。あそこで振りぬいたらもったいない。当てるだけ、当てればと思ったんだけどね」
大久保が得意とする一瞬の動き出しからフリーでラストパスを受けるパターン。全体的にそれは少なかった。自分で持ち込むか、クロスに合わせるしかチャンスが無かった。そこには大久保がイメージしていた受け方と、他の選手たちとの“ズレ”が影響していたのかもしれない。
リードされた状況で終盤に投入されたコートジボワール戦に関しては、シチュエーションの難しさもあった。最初1トップに入った大久保は、そこから3分ほどして左ウイングにチェンジしている。
その間にザッケローニ監督から指示があったというが「最初は全然指示が聞こえずに、みんなもわかってなくて。オカ(岡崎)が右なのに左に行ったりして、そのまま確認出来ないままだった」と大久保は振り返っている。逆転されてチーム全体が混乱してしまっており、攻撃のイメージを全員で共有出来る状況にはなかったのだろう。
「逆転されるとああいう風になるのかなって思いながらピッチに入った。メンタル的にみんな落ちた感じはしましたね。俺は途中からの出場だから、同点に追いつこうと思ってたけど」