W杯でハメス・ロドリゲスに魅了された
多くの左利きアタッカーに共通するように、籾木も右から中央へカットインしてのシュートを得意とする。ボールを受けた時、既にシュートへの道筋は見えていた。そして、ゴールへの確信もあった。
籾木は今シーズンの開幕戦にも2得点を挙げており、視察に訪れていたなでしこジャパンの佐々木則夫監督も賞賛していた。
そしてこの日、籾木は得点以外にも相手にダメージを与えていた。INACはベレーザの攻撃を担うボランチにプレスをかける必要があったが、トップ下の籾木が自由な動きで浮いた位置を取ることで、相手に的を絞らせなかった。
「籾木選手のポジショニングが良かった。(INACの)後ろが3枚なのでボランチのどちらかが彼女の位置を気にしないといけなかった。だから向こうのダブルボランチに、こちらのボランチが行きづらい部分があった」と澤は話した。
相手の嫌がる位置に入ることは、籾木が常に意識していたことだ。
「相手がどういう守備をしてくるかで自分のやることも変わってくるんですけど、ディフェンスラインとボランチの間に入ることは意識していたので、相手の選手にそう言ってもらえたのは良かったです」
そんな籾木は、ブラジルW杯を見て世界のスーパースターのプレーを参考にしていた。これまでも彼女は、スペインのダビド・シルバやオランダのロビン・ファン・ペルシーなど同じ左利きの選手をよく観察していた。そして今回のW杯では、コロンビアのハメス・ロドリゲスに目を奪われた。
「日本戦で決めた4点目とか、ちょっと浮かして決めるゴールは自分も好きなプレーです。ウルグアイ戦で決めたボレーも凄かった。その試合ではクロスを右足で決めたシーンがありましたけど、何度も動き直していて凄いなと思いました。今は(J・ロドリゲスが自分の中で)きてますね」と笑顔を浮かべた。
INACとしては完全な力負けだった。攻撃的な選手を2枚同時に投入し、勝負に出た直後に先制点を許した。澤は若手の奮起を求める。
「周りが声をかけないといけない部分もあると思うんですけど、自分で判断できる力を持てばもっと良くなっていくと思う。今の若い選手たちはちょっとメンタルが弱い。メンタルもそうだし、練習量も足りないと思う。指示されて動くのではなく、自分で判断する力がないと。言われてやるとプレースピードも遅くりますし、判断できる力が身につけばまた変わるのかなと」
INACはこれで今シーズン6敗目。昨年までの絶対女王の試行錯誤は、これからも続きそうだ。一方のベレーザは、若い力が躍動し3戦ぶりの勝利。9戦負けなしと好調をキープした。
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