苦難の道のりを歩む木鈴と菜入。同じピッチに立つ日を楽しみに
キャプテンを務め、引き締める役目だった。だが、そんなしっかり者でもドジを踏んだことがあった。
「高2のときの遠征で、朝の食事前の体操に寝坊しちゃったんですよ。たまたまひとり部屋で、体操から戻った菜入が部屋をノックしてくれて起こされた」
これは痛恨事だ。監督が柴田峡(松本山雅FCヘッドコーチ)の頃だったら、120パーセント坊主。当時の冨樫剛一(東京ヴェルディユース監督)であっても、その日の試合には使ってもらえない。
「やばいよ。どうしよう」と青くなる木鈴に、「大丈夫。バレてない」と菜入はにっこり笑った。
どうやら、双子の片割れがいたため、木鈴もその場にいるものとされたようである。食事会場に行き、「おはようございます」と冨樫に挨拶したところ、「おう、おはよう」と返ってきて、本当にバレてないんだと小躍りした。まるで漫画のようなツインズ・エピソードである。
「これから試合に出て、チームの順位を上げていきたい。いまは大学でプレーする同期とも、またヴェルディで一緒にやれたら。それは強く思います。
年末にフットサルをやるんですけど、久しぶりでも息が合うし、互いに考えていることがわかる。近くにいてくれたら助かるだろうなと」(木鈴)
「大学に行ったメンバーが練習に呼ばれて、ロッカールームにいても自然な感じですよ。おう、来たかと。また同じチームで戦えたら楽しいだろうなぁ」(菜入)
山浦、渋谷亮(中央大4年)、大木暁(駒澤大4年)、相馬将夏(法政大4年)、南部健造、牧野修造(ともに中京大4年)、彼らもまた人生の岐路に立ち、学生生活最後の夏を迎えている。今後、どのような決着を見るか、追い追い伝えていきたい。
さしあたって僕は、木鈴と菜入が同じピッチに立つ日が来るのを楽しみにしている。いつもの調子でぎゃんぎゃん言い合いながら、チームを勝利に導く。そこで初めて、ふたりはともに歩んだ苦難の道のりを心から笑い飛ばせるに違いない。
(文中敬称略)
【了】
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