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2015年の君たちは――。東京ヴェルディユース、花の92年組を追って:第8回 キローラン木鈴・菜入(東京ヴェルディ)

眩い光を放った東京ヴェルディユースの92年組。プロに進んだ者もいれば、大学に進んだ者もいる。彼らの足跡を追う。

シリーズ:2015年の君たちは――。東京ヴェルディユース、花の92年組を追って text by 海江田哲朗 photo by Tetsuro Kaieda , Asuka Kudo / Football Channel

「これがプロの公式戦なんだな」。プロデビューを果たした菜入

2015年の君たちは――。東京ヴェルディユース、花の92年組を追って:第8回 キローラン木鈴・菜入(東京ヴェルディ)
佐藤優也【写真:工藤明日香 / フットボールチャンネル】

 7月26日、J2第23節、松本山雅FC vs 東京ヴェルディの試合は1-1のドローに終わった。75分、東京Vが杉本竜士のゴールで先制したが、81分、松本はセットプレーから犬飼智也のヘッドで同点に追いつく。決定機の数では20位の東京Vが2位の松本を上回り、あと一歩まで追い詰めたゲームだった。

 この日がプロデビュー戦となったゴールキーパーのキローラン菜入(ナイル・東京ヴェルディ)は、終了と同時にピッチに尻をつき、しばらく動けなかった。

「疲れました。これがプロの公式戦なんだなって」

 過去に味わったことのない疲労感だった。後半、ゴールキックのとき、太ももの裏、ふくらはぎの筋肉がわずかに痙攣した。ピンと糸を張った状態が続き、無意識に力が入っていたのだろう。

 昨年から東京Vのゴールマウスに君臨する佐藤優也より、「菜入、頼むぞ」と連絡があったのは5日前の未明、前節のジュビロ磐田戦の直後だった。

 その試合で佐藤は右手の甲を骨折し、ベテランの柴崎貴広も負傷により戦線離脱中。となれば、今季リーグ戦22試合で15試合バックアップを務めた菜入の出番だ。時刻は深夜2時半、気持ちが高ぶり、空が白み始める頃まで寝つけなかった。

「勝ちたかったですね……。前半、サビアのヘディングシュートを止めて、いいリズムでゲームに入れた。今日はシンプルにやろうと心がけました。次からは持ち味のビルドアップなど、攻撃の起点となれるプレーを増やしていきたい」

 悔いは、ある。失点の場面、相手がニアサイドを狙ってくることはわかっていた。わかっていたなら周囲に指示し、もっと人を寄せておくべきだった。それによって、自分の立ち位置も変わったはずだった。

 もっとも、対処をしたからといって、確実に防げたとはいえない。人を寄せていたことで飛び出す動きが制限されるケースもある。高度なレベルにおける成否の分水嶺は、ほぼ解のない領域である。実戦を重ね、経験を積むということは、その領域を狭めていくことだ。

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