試合を通して躍動した猶本光
この試合の鍵となったのは、ボランチのパフォーマンスだった。互いに4-4-2システムで戦う中で、中盤の底でいかにボールを取れるかが重要だった。浦和レッズレディースにしてみれば、ベレーザにボールを動かされることは想定内だった。それでも、狙い所はしっかり定めていた。ビルドアップの起点になるベレーザのボランチに、赤いユニフォームが勢いよく詰める。
「中盤で後手を踏むと相手の良さが出てしまいますし、そこを潰せれば逆に私たちがペースを掴める」
そう話すのは浦和レッズレディースのボランチ・猶本光だ。細かくパスを繋いでくるベレーザに対して果敢に奪いに行き、前半開始早々には猶本が鋭いプレスでかっさらい、GK強襲のシュートを放っている。
この日の猶本の運動量には目を見張るものがあった。味方のスペースを作るために細かく動き直し、積極的にパスを呼び込んでは前線にボールを供給した。相手ゴール前に顔を出す回数も多く、それでいて攻守が入れ替わった瞬間に素早く帰陣し、相手の攻撃を遅らせた。
後半アディショナルタイムには、この日最後にして最大のビッグチャンスが訪れる。カウンターのスタートと同時に猶本は前線に駆け上がり、ドリブルでバイタルエリアに侵入。この積極性が起点となり、GKと一対一の決定機を演出するも、決め切ることができなかった。
猶本は90分間フルスロットルで走り続けた。常にボールに関わろうと動き回り、試合終盤でも自陣から相手ゴール前まで走ってチャンスを演出した。ペース配分は考えていなかったという。
「お昼の試合だったら(ペース配分)していたと思うんですけど、夕方からだったので全然コントロールしなかったです。最後まで長い距離をスプリントしてチャンスに関われたというのは、トレーニングの成果かなと思います」
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