サッカーはディアスボラにとって宗教
第二に、領土を持たないが、世界各地に根を下ろしている少数民族のディアスボラ(国外居住者)のチーム。
アラメア・スルヨエとは、イエス・キリストとその使徒たちが話したとされるアラム語を共通言語とした古代アッシリア人、アラム人の血を引き、キリスト教を信仰する民族、とサッカー協会の理事で監督のメルケ・アランに教えられた。
現代ではアッシリア人と呼ばれることが多い彼らだが「どの国のパスポートを持っていても、アラメア・スルヨエはキリスト教とサッカーによって一つになる。我々にとってサッカーはもう一つの宗教だ」とアランはきっぱり言った。
ドイツやスイスなど7ヶ国から招集された選手たちは、試合を重ねるごとに連携がよくなり、南オセチアと対戦した3位決定戦では、緩急のある攻撃で4点を奪ってその実力を示した。結果は3位。
タミル・イーラム(「タミル解放の虎」の意味)は、スリランカ北部と東部、インド南部にいるタミル人の国外居住者によるチーム。独立を求めて戦った内戦(1993~2009)をきっかけに世界各地に散ったタミル人が、サッカーを通して民族としての誇りを世界に伝えようと結成された。開会2日前に各地から集まった選手たちは、残念ながらコンディションが整わなかったようで、結果はふるわず11位。
第三に、現在属している国から独立する意志は希薄だが、独自の言語と文化を持つ民族であること、または思想や信念に基づいた共同体であることを世界に伝えたいというチーム。
オクシタニアは南仏のオクシタン語を話す民族のチーム。「オクシタンと言ってもフランスでさえ知らない人が多い。サッカーを通して我々の文化を世界に知ってもらいたい」とディディエ・アミエル監督は言う。
サイドにスピードのある選手を配し、巧みなパス回しとドリブルで攻め込む攻撃は迫力があった。ただ身長が高くない選手が多いためか、ハイボールを放り込まれるとあっさり失点する癖があり、結果は7位。