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ブラジルW杯から読み解く戦術の潮流。オランダ対メキシコ戦で見えたハンドボール化する未来型サッカー

text by 西部謙司 photo by Getty Images

アイデアがなかったベルギーが躍進した理由

 ただし、バイエルンのような複雑なポジションチェンジを含むビルドアップはドイツにはない。4バック全員がセンターバックを本職とする選手だからだ。その点では、予想されたほどバイエルン化はしていなかった。

 トマス・ミュラー、マリオ・ゲッツェ、トニー・クロース、フィリップ・ラーム、バスティアン・シュバイシュタイガーのバイエルン勢による流動性は高く、メスト・エジルもバイエルン所属かと思うぐらい馴染んでいるのだが、中盤から前方だけなのだ。

 センターバック4人によるディフェンスラインはベルギーもそうだった。ベルギーはカウンター型なのだが、グループリーグでは相手に引かれて結果的にあまり得意ではないポゼッション主体で戦っている。

 個人技は高いがコンビネーションがないベルギーは、広いスペースを攻めるときは強いのだが、引かれるとアイデアがない。それでも全勝でグループを突破できたのは、空中戦という武器があったからだ。ドイツ同様の4バックは、確かに守備は安定しているので相手のカウンターへの耐性もあった。

 ハメス・ロドリゲスというカウンターエースを擁していたコロンビア、中盤の強固な守備とカリム・ベンゼマのスピードを生かしたフランスもカウンター型の強者だ。

 日本のアルベルト・ザッケローニ監督が断念した3-4-3を採用していたコスタリカ、メッシ専用の“エンガチェ・システム”だったアルゼンチン、かっちりした攻守でこじんまりしたオールマイティーの米国など、興味深いチームは多い。もちろん、開催国ブラジルだけでも書くべきことは尽きない。個性豊かなW杯だった。

【了】

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