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ブラジルW杯から読み解く戦術の潮流。オランダ対メキシコ戦で見えたハンドボール化する未来型サッカー

text by 西部謙司 photo by Getty Images

ポゼッションかカウンターか

 どんなチームにも長所短所がある。50年代の大スターだったブラジルのジジは、

「サッカーは寸足らずの毛布だ」

 と言った。頭からかぶると足が出てしまい、足下をくるめば上半身が寒い。サッカーで完璧なバランスをとるのは難しい。

 4つの局面すべて秀でていれば、どのタイプの相手とも勝負できるし、試合の流れに応じた戦い方もできる。ただ、オールマイティーなチームは、どこにも強みのない器用貧乏になる恐れもあるだろう。

 ポゼッション・スタイルと堅守速攻のどちらもハイレベルのオールマイティーとしては、CL優勝のレアル・マドリードがあげられる。だが、むしろ例外的存在だ。通常は、どちらかに軸足を置くことになる。

 前回大会はポゼッション型のスペインが優勝した。前後のユーロ優勝も含めて、6年間も頂点に君臨していた。しかし、今大会はスペインのティキ・タカの効果は半減し、カウンター型が優勢を占めた。

 長期的に強力だったスペインのサッカーは、クラブでのバルセロナの強さとも相まって、世界的に大きな影響を与えている。各地にバルセロナ風、スペイン風のサッカーが広まると、当然それに対抗するスタイルも進化する。今回はカウンター型が有利な時期に当たったが、どちらが強いとか正しいという問題ではない。

 スペインの路線を取り入れて強力だったのはドイツだろう。

 先発の6、7人がバイエルン・ミュンヘンの選手で占められているのが大きい。グアルディオラ監督が指揮を執るバイエルンは、本家のバルセロナを上回るパスワークのチームになっている。

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