チリはなぜスペインを無効化できたのか?
コンパクトな守備と速攻のオランダに敗れた後、前回王者スペインはチリにも0-2で敗れている。
今大会のチリは、オランダとは全く違う戦い方でスペインに完勝した。オランダが引いてブロックを作る待ち受け型の守備、ハンドボール的な守備だったのに対して、チリは前線からプレスをかけてティキ・タカを機能させなかった。
中盤や敵陣は別だが、自陣内でのティキ・タカは、この2年ぐらいで急激にリスクが高まっていた。ティキ・タカの権威であるバルセロナも、自陣でのパス回しをカットされるケースが非常に増えていたのだ。立ち上がりの10分間、バルセロナの自陣でのパス回しに対して猛烈なプレスをかけていくのは、リーガ・エスパニョーラでは日常的な光景になっていたとさえいえる。
センターバックの間にMFが下りて相手のプレスに対する組み合わせを変えたり、GKを経由してサイドを変えるなど、自陣でのティキ・タカのやり方がすっかりわかってしまったのが大きい。ただ、ボールを追い回して効果があるのはせいぜい20分間で、それ以上は続けられない。だから、バルセロナもスペインも立ち上がりに大きなミスさえしなければ、やがて自分たちのペースに持っていけていた。
ところが、チリは90分間やり続けた。スペインのティキ・タカはほとんど機能せず、あのスペインがロングボールでプレスを回避しなければならなかった。高率のポゼッションという、スペインの戦い方の前提が崩されてしまったのだ。
チリは32ヶ国中、最も低身長だった。3バックの中央を守るガリー・メデルは172センチ、現代のセンターバックとしてはありえない身長である。押し込まれて高さ勝負に持ち込まれれば不利は明白。前方から絶え間なくプレスをかけ続けたのは、そうした事情もあるのだろう。
ホルヘ・サンパオリ監督は、前回大会で指揮を執ったマルセロ・ビエルサを敬愛してやまず、ビエルサのサッカーを継承して発展させた。
守備はマンツーマン、攻撃はコンビネーションやオーバーラップを多用するなど、運動量とインテンシティが際立つビエルサの戦法を続けたことが、あの驚異的な運動量を生んだのだろうか。