攻撃力ではオランダを上回ったメキシコ
どちらかといえば、オランダがボールを持たされる流れになった。パス回し自体は相変わらず上手いが、今回のオランダはパスで崩しきる力は弱い。メキシコはロッベン、ファン・ペルシーの2トップを密着マークしながら、センターのラファエル・マルケスが深い位置どりで3バックが一気に置き去りにされるリスクを軽減した。
メキシコに対するオランダの守備は、大勝したスペイン戦と同じ。ラインコントロールを繰り返しながらコンパクトな陣形を維持。いい形で奪ったら2トップの圧倒的なスピードでカウンターを狙う。
完全にミラーゲーム。わずかな違いは、オランダが一発の裏への飛び出しを狙っていたのに対して、メキシコはトップへのクサビを攻め手にしていた点だろう。このスタイルを伝統としてきたメキシコに一日の長があったといえる。
直接裏を狙う攻撃は、よほどFWの飛び出しとパスの質が合わないかぎり成功しない。ロッベン、ファン・ペルシーをもってしても、わずかでもコントロールに手間取れば裏をとったアドバンテージは消されてしまう。高精度のパスを通せるのも、スナイデルぐらいだった。
メキシコのアプローチは、パスを回しながらトップの足下へ速くて低いパスを入れることだった。そこでFWがボールを止めてしまえばパワフルなオランダのDFに防がれてしまうが、メキシコの2トップは足下へのパスをワンタッチで“フリック”する。
コースを変えてディフェンスラインの裏のスペースへ流し、“3人目”の選手が抜け出す。あるいは、短くラインの手前に戻して食いつかせ、すかさず裏へのスルーパスを通す。
ラストパスの出所が相手ディフェンスライン近くになるため、守備側の対応はより難しく、一瞬の差で決定機を作れる。裏へ出るタイミングも計りやすい。メキシコはクサビとフリックを組み合わせた崩しを得意としていて、何度もチャンスを作っていた。
サッカーがハンドボール化した場合、コンビネーションによる崩しが重要になる。攻撃のタレントではオランダに負けていても、攻撃力はメキシコのほうが上だった。