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ザックジャパンはなぜ攻撃偏重のスタイルだったのか?“自分たちのサッカー”から考える日本の進むべき道

text by 西部謙司 photo by Getty Images

「自分たちのサッカー」の先に優勝があると考えるのは非現実的

 ベスト16に進出した南アフリカW杯に比べて、グループリーグで敗退した今回の日本のほうが、攻撃力がアップしていたことに異論はないと思う。ブラジルでは十分に発揮できなかったかもしれないが、コンビネーションを駆使した日本の攻撃は際だった特徴を持っていた。

 メッシやロナウドのようなスーパースターがいるなら、彼らに合わせてチームを整理すれば攻撃力アップは見込める。しかし、そうした特別なアタッカーがいない場合は、ザッケローニがやったように、いくつかのパターンを導入して連係を成熟させ、素早いパスワークでの攻撃を狙うのは理にかなっている。

 例えば、ベルギーは個々の能力が高いチームだが、日本のようなコンビネーションはほとんどない。カウンター時のドリブル突破や高さを生かした空中戦などに威力があり、その点で攻撃力は高いが、日本とは違うタイプである。

 日本に近いのはメキシコ、チリ、コスタリカだ。ボールコントロール、素早さ、運動量、連係を生かした戦い方は共通していて、いずれもベスト16に進んでいる。攻撃に関しては、日本の方向性自体は正しかったといえるのではないか。

 方向性は合っていたとして、3試合で2得点は明らかに足りなかった。ただ、チャンスはそれなりに作れていた。ストライカーの不在、決定力不足ともいえるが、現状の決定力で勝負するにはチャンスの数が足りなかったのかもしれない。

 しかし、当面の課題は攻撃力よりも守備のほうだろう。引き続き攻撃力も上げなければならないが、3試合6失点は多すぎる。

 ちなみに、本田をはじめ何人かの選手たちは「優勝」を口にしていた。選手が高い目標を掲げるのは構わないが、W杯は失点の少ないチームが優勝する大会である。フランス、イタリア、スペインはいずれも7試合2失点で優勝した。

 32チームの大会になってからの4大会で、3つの優勝国は失点2なのだ。こういう相手に先制点を許したら、もう勝機はない。日本が「自分たちのサッカー」の先に優勝があると考えていたとしたら、あまりにも非現実的だったといわざるをえない。

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