「移民」という異質な存在が質の高い競争環境を作り出す
ブンデスリーガの下部組織を取り巻く環境が、ゆくゆくはドイツ代表の強化に繋がっているのは間違いない、とアフガニスタン人の青年は言う。下部組織ではまずディシプリンが徹底される。規律を守るということだ。そして、組織の中で相手を敬う、という精神が植え付けられる。
青年はブレーメン以外にも、ドイツ北部の選抜チームに入っていた。ブレーメンで培った力を発揮するいい機会だったのはもちろん、他人と集まったときのコンディションの作り方、という意味でもいい機会だったという。
選抜チームで、例えば韓国で行なわれる国際トーナメントに参加する。普段一緒にプレーしない選手同士で集まることになる、大きな大会でのコンディションの作り方を訓練することができる。
規律の遵守によるチームワークの徹底、選抜チームでのコンディションの作り方は、ひいてはドイツ代表でのパフォーマンスに繋がっていく。そして下部組織に「移民」という異質な存在がいることが、質の高い競争環境を作り出しているとも言えるだろう。
アフガニスタン人の青年によれば、ある大会で戦ったとき、エジルは「周りの連中が闘志を全面に出して戦っている中で、一人だけ落ち着いてプレーしていた。そのリラックスした雰囲気が、かえって目立っていた」そうだ。
つまりこのときエジルは、相当に異質な存在として周囲の目に映っていたということだが、育成年代でのこのような経験は、ゆくゆくはW杯というビッグトーナメントで、アルジェリア代表やアルゼンチン代表といった異質な集団と戦う上での非常に有効な訓練となっているとは言えないだろうか。
【次ページ】W杯を戦うためのヒントが育成年代に散りばめられる