1800年代から築きあげた長い歴史があるドイツ
ドイツ代表が凱旋した。2014年7月15日、指揮官レーブと仲間たちはベルリン市内でのパレードを終えて、ブランデンブルク門の前で黄金のW杯を掲げる。人々は熱狂に渦巻いた。
ドイツ代表はなぜ今回のブラジルW杯で優勝することができたのだろうか。コーチ時代を含めた長期間に渡る監督レーブの指揮、自前で建設したキャンプ地の充実、ケルン体育大学にある卓越した分析チームの存在、ひいては国内リーグ、ブンデスリーガの発展など、様々な理由を考えることはできる。
ここでは、キャンプ地の建設や分析チームの存在といった単にブラジルW杯に向けての準備ではなく、ブンデスリーガの充実といった一歩引いたところから、W杯優勝に至った要因を簡単ではあるが、主に「歴史」「移民」「改革」の3つの観点から考えてみたい。
まず「歴史」である。大前提としてドイツには長いサッカーの歴史があり、肥沃な土壌がある。DFB、ドイツサッカー協会が発行する守備の戦術書をめくれば、1800年代後半からのフォーメーションの移り変わりが記載されている。
昨季のブンデスリーガ2部、フォルトナ・デュッセルドルフ対1.FCケルンという伝統のライン・ダービーが行なわれた日には、駅前でユニフォームを着た人たちを見た初老の女性が、「ああ、今日はフォルトナ対ケルンね」とつぶやいた。
他に例を挙げれば枚挙に暇がないが、広く深いサッカーの母体がドイツにはある。ここで重要なことは、その「歴史」が、「移民」にとってサッカーを始めるきっかけになる、ということだ。
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