タイ最強軍団からの“逆輸入”
W杯による中断を経て、再開したJ1リーグ。柿谷曜一朗のスイス・バーゼルへの移籍という大きな動きがあったセレッソ大阪では、その影で異色のキャリアを持つ興味深い選手が加入した。
タイ・プレミアリーグ、ブリーラム・ユナイテッドから完全移籍で加入した平野甲斐だ。昨シーズン、J2・カターレ富山からブリーラムへと移籍し、約1シーズン半をタイリーグで過ごしてのJリーグ復帰となった。
近年、急激に日本人選手の数が増えているタイリーグ。今季は岩政大樹(BECテロ・サーサナ)、茂庭照幸(バンコク・グラスFC)、西紀寛(ポリス・ユナイテッド)、カレン・ロバート(スパンブリーFC)ら日本で実績のある選手も数多く参戦、下部リーグまで含めた日本人選手の総数は60名を数えるまでになった。
だが、これまでは、タイを経てJリーグに復帰した選手は皆無に等しかった。契約に関する問題等から早々にタイを去ることとなった林丈統が大分トリニータと契約に至った例などはあるものの、今回の平野のセレッソ入りとは意味合いが違った。
林の場合、すでに日本での知名度や実績を十分に持っていたのに対し、平野は全国的には無名に近かった存在。その彼がタイに渡り、2年連続で出場したACL(アジアチャンピオンズリーグ)などでのアピールによって“逆輸入”され、結果的にJ2からJ1へのステップアップを果たした意味は大きいだろう。
大学卒業後、富山で3シーズンを戦った平野。安定したJリーグでの生活を捨てて未知だったタイリーグに飛び込み、タイ最強軍団の一員として1年半を過ごした。その濃密な時間を、平野はこう振り返る。
「この1年半は100点満点中100点以上ですね、間違いなく。タイに来たことは、間違いじゃなかったです」