クラッキ不足の背景にフィジカル重視の育成
さらに指揮官が犯したのは、コンフェデレーションズカップのチームベースに過度の信頼を置いたことだ。フレッジだけでなく、所属クラブで低調なパウリーニョも今大会の不振の遠因だった。
昨年のコンフェデレーションズカップで確立したのは高い位置からボールを奪い、鋭いハーフカウンターで相手ゴールに迫るというスタイルだが、攻守の切り替えを体現する存在だったのがパウリーニョ。最後まで本来の輝きを取り戻すことなく、大会途中にはレギュラーの座も奪われている。
ドイツ戦翌日はセンセーショナルな見出しで敗戦を糾弾したブラジルの高級紙もあるが、冷静なコラムニストは「ブラジルのサッカー界は生まれ変わる必要がある」と根源的な問題を指摘した。
クラッキ不足の背景にあるのは、やはりフィジカル重視の育成だ。各クラブの下部組織ではフィジカル重視の選手育成が目立ち、かつて王国が数多く輩出してきた背番号10タイプの創造性溢れる選手は絶滅危惧種となりつつある。
皮肉にもブラジル経済の隆盛で、南米各国の好選手がブラジル国内に集まっているが、クリエイティブな攻撃的MFはコンカ(フルミネンセ)やバルディビア(パルメイラス)、ダレサンドロ(インテルナシオナウ)など外国人が目立つ。
ランセ紙の寄稿では自身も小柄な名手として活躍したジュニーニョ・パウリスタ氏が「下部組織でフィジカルを重視しすぎるのが、平凡な選手を作り出している」と批難する。
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