実力を発揮できない要因となったW杯とJリーグの差
日本選手が持ち前のテクニックを発揮できなかった最大の理由は、W杯のインテンシティ(プレー強度)の高さにある。
W杯では、選手たちがボールを自分のものにするため、すさまじい勢いでぶつかり合う。また、ジャッジの基準はヨーロッパにあり、少々の身体接触ではファウルを取らない。アジア勢のなかでは大柄でフィジカル・コンタクトに強みを発揮する韓国でさえ、ベルギーには完全に当たり負けしていた。また、メキシコやチリの選手は小柄だが頑丈な体格をしており、体の使い方がうまく、自分たちより大柄な選手にもほぼ互角に渡り合っていた。
W杯の試合とJリーグの試合とでは、インテンシティにおいて大きな差がある。
攻撃の選手の場合は、アイディアの乏しさも痛感させられた。もちろん技術的、身体的な裏づけがあってのことだが、強豪国の選手は相手の意表を突くプレーを大胆にやってくる。そのような場合、日本選手は対応できないことが多かった。それは、Jリーグでは意外性あふれるプレーをする選手が少ないからである。
個々の選手で言えば、内田と長友は概ね特長を発揮し、奮闘していた。それは、彼らが数年前から欧州のビッグクラブに所属し、高い意識を持って練習に取り組み、試合に常時出場して経験を積んでいるからだろう。
本田は、相変わらず堂々とプレーしていたが、フィジカル・コンディションが万全ではなかったように感じた。
香川は、やや不本意なシーズンを送った後だけに、その苦い思いをバネにして奮起し、W杯では活躍するだろうと思っていた。しかし、相変わらず高い技術を持っているものの、試合勘の不足と少しばかりの自信のなさを感じた。彼の実力は、こんなものではない。この経験を糧として、さらに成長してほしい。
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