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暴走はなぜ止まらないのか?「新国立競技場問題」の核心(その3)

text by 佐山一郎

中東の日よけの屋根のように開いていちゃいけない

暴走はなぜ止まらないのか?「新国立競技場問題」の核心(その3)
国立競技場起工式での灘尾弘吉文相(当時)。(写真は『国立競技場十年史』より転載)

佐山 フットボールラヴァーの理想を言えば、重箱型で客席だけ有蓋の専用がやはりいい。美装以前にまずは観客意思を満たす機能面の充実なんじゃないかな。

後藤 雰囲気がいいのはもちろんだけど、イングランドではほんとに雨が降っても気がつかない。上が開いてるような屋根は絶対吹き込む。中東の日よけの屋根のように開いていちゃいけない。

 白鳥が羽を広げる瞬間だとか、伊達政宗の兜の前立ての三日月をモチーフにした大屋根だとか、そんなもんじゃないんだよ。ジェノアとサンプドリアが使うルイジ・フェラーリスの死角が90年W杯の前に問題になって、設計ミスということで工事をし直した。タッチラインが見えないからということで、わざわざ造り直したところが偉いんです。見やすいし、非常にいい。

佐山 1960年代後半の日本サッカーリーグでは、広島国泰寺高校(旧制広島一中)からのテレビ中継があったでしょう。土のグラウンドにロープ一本めぐらしてるだけでも、とりあえずは間近で黄金時代の東洋工業の試合を観られる広島の人が羨ましかった。中高年の過去賛美でいってるんじゃなくてね。

後藤 泥だらけの高校のグラウンドでねぇ。やっぱり使う人の意見はよく聞かないと。箱形までいくかどうかは別として、とりあえずは、ガンバ大阪が参加しているサッカー専用スタジアム(仮称・吹田市立スタジアム/2015年秋完成予定)がうまく行ったら、マリノスだって適正規模のコンパクトなのをマリノスタウンに造るかもしれない。フットボール専用が一つずつ増えていけば、観やすい、観にくい、という議論はどうでもよくなっていくはずですよ。

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