“時代遅れ”とも言えるパフォーマンスを続けるメッシ
近年のサッカー界では、試合への貢献度として走行距離が大きな意味を持っている。監督によっては「走れない選手はいらない」という哲学を持つ人物も少なくなく、実際に素晴らしいテクニックを持ちながら90分間走り続ける選手も多く存在し、その評価を一層高めている。
そんな現代で“時代遅れ”とも言えるパフォーマンスを続ける選手がいる。リオネル・メッシだ。
アルゼンチン代表のキャプテンを務めるメッシは、スイスとのラウンド16において延長後半13分、ピッチ中央をドリブルで突破し、アンヘル・ディマリアに見事なパスを通して決勝ゴールをアシスト。マン・オブ・ザ・マッチに選出された。
確かに、あの突破がなければディマリアのゴールは生まれなかったはずだし、あの得点がなければPK戦に突入していたことは間違いなかっただろう。メッシのマン・オブ・ザ・マッチに異議を唱えるものはいないはずだ。
しかし、FIFAが提供するスタッツを見てみると、あるいは異議を唱える人物もいるかもしれない。メッシは、延長前後半30分を含めた120分をフルで戦いながら、両チームフル出場選手中最低の10.7kmしか走っていないのだ。
得点を決めたディマリアが12.6km、スイス代表MFジェルダン・シャキリが両チーム最高の14.6kmを走ったことからも、メッシの走行距離がいかに少ないかが分かる。
しかもメッシは、この試合に限らず今大会出場4試合で総走行距離33km、平均8.25kmしか走っていない。90分で終わるグループリーグ3試合では一度も10kmを超えなかった。
ブラジル代表FWネイマールが4試合平均10.2km、ラウンド16で延長戦を戦っていないオランダ代表FWアリエン・ロッベンが同10.7kmを記録しているだけに、後半18分に退いたグループリーグ最終戦ナイジェリア戦を差し引いても圧倒的に少ないものだ。
それでも彼はグループリーグ3試合全てで得点し、ラウンド16では見事なアシストを決めて4戦連続マン・オブ・ザ・マッチに選出されているのだ。