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メッシはなぜ止められないのか? 小さくても倒れない“最強ドリブル”の秘密に迫る

text by 清水英斗 photo by Getty Images

相手のチャレンジを逆手にとれる技術の高さ

 好調時のメッシに対して相手ディフェンダーが間合いを詰めると、あの手この手で突破されてしまう。では、詰めないパターンではどうなるか? 守備者が間合いを詰めないで下がっていくのも、当然ながら限界がある。

 そのままだとゴールまでたどり着いてしまうからだ。ゆえに、下がる限界としてはペナルティエリアのラインぐらいまでとなる。この辺りまで下がるとGKのカバーも期待でき、周囲もゴールを守るためにスペースを狭くしているため、ドリブル突破に対しては幾分対応しやすくなる。

 しかし、下がりすぎると、ドリブルには対応できても、メッシにそのままシュートを叩き込まれる恐れも強くなる。結局、ディフェンダーはどこかのタイミングでメッシに対してチャレンジをしなくてはならない。そしてメッシは、その事情もよく知っている。

 レアル・マドリーとの『エル・クラシコ』では、こういうシーンがあった。マドリーが高いラインを引いてから下がり、ある程度の位置で下げ止めてからチャレンジに行こうとしたところ、その刹那、メッシは大きめにスペースへボールを出して相手を置き去りにした。

 つまり、守備側が下がる動きに対して、メッシはどんどんドリブルで進んでくるため、相手は我慢しきれなくなって前に取りに来る。そのパワーの転換点を狙っているのだ。ゴールを守る守備が、ボールに対する守備に切り替わる瞬間。メッシはそこを見逃さない。

 メッシの好調時は、そうしたディフェンスの動きを予測したり、細かい動きを察知する能力が光っている。筆者のような物書きでもそうだが、スラスラと筆が進むときには頭のなかで多くのことをあまり考えていない。論理的に多くを考えなくても、勝手に進んでしまう。好調時のメッシのプレーも、そういうフィーリングが感じられる。

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