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勝利の感涙も現地紙は「泣きっ面はうんざり」と批判。負ければ「永久戦犯」、巨大な重圧に苦しむセレソン

text by 下薗昌記 photo by Getty Images , Masaki Simozono

監督が異例の告白。招集メンバーへの後悔

勝利の感涙も現地紙は「泣きっ面はうんざり」と批判。負ければ「永久戦犯」、巨大な重圧に苦しむセレソン
アゴーラ紙6月30日の紙面では「泣きっ面はうんざりだ」という見出し【写真:下薗昌記】

 招集時の会見で「若手のような野心のないベテランよりも、若手とともにチームを成長させる方が容易い」とスコラーリ監督は経験のなさを問題視しなかったが、現在のセレソンには「永遠のカピタン(主将)」と称される1970年メキシコ大会時のカルロス・アウベルト・トーレスや、時に自らのミスを棚に上げてまで周囲を鼓舞する闘将ドゥンガのようなメンタルの強いリーダーがフィールドプレーヤーに不在。

 4年前の「十字架」を背負いながらも、PK戦の前にミネイロンスタジアムに詰めかけたサポーターに盛り上がるように訴えたジュリオ・セーザルが本当の修羅場を知る唯一の男である。

 スコラーリ監督もこうした事態を看過してはいない。コロンビア戦に向けて本格始動した1日、ブラジル代表のキャンプ地にはこれまでもメンタル面のサポートを行ってきた女性の精神科医が招かれるなど、対策が講じられている。

 そして指揮官の懇願はメディアにも向けられた。セレソンを追う数多くのジャーナリストの中から、TVや紙媒体などで大きな影響を持ち、「親スコラーリ派」の6人のジャーナリストを招いて、約1時間の緊急懇談。開幕戦以降のセレソンの足取りについて批判的なメディアに対して、チームへの支持を求めたという。

 この懇談の場で、スコラーリ監督は自らが招集した23人の顔ぶれについてその名こそ明かさなかったものの「選択を後悔している」と異例の告白。2002年には王国を五度目の優勝に導いた百戦錬磨の指揮官も、自国開催の難しさを感じ取っているようだ。

 チリ戦の警告で、準々決勝は出場停止となったルイス・グスタボの代役や、不振が続くフレッジの処遇などピッチ内に問題は山積するセレソンだが、コロンビア戦を前にまず、解決すべき問題は、選手たちのメンタル面。

 優勝すれば国民的英雄、敗れればA級戦犯ならぬ「永久戦犯」――。「泣き虫集団」の反発力が準々決勝で問われることになる。

【了】

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