ボールを支配されるも、強固な守備とカウンターで対抗
弱者の兵法。決して悪い言葉ではない。相手に合わせたフォーメーションの設定、23選手をフル活用した選手の選択。強大な相手をリスペクトし、それでも打ち破るために最大限の策を練る。
優勝候補の筆頭、ドイツを前にしたアルジェリアはロシアとのグループリーグ最終戦から5人の先発メンバーを変更して臨んだ。
ドイツにとって、アルジェリアは旧西ドイツ時代に2戦2敗と相性の悪い相手だったが、それは過去の話。選手の質、チームの強さ、どれを見ても差は歴然でドイツの圧勝も十分有り得た一戦だった。
スタッツを見ても、支配率はドイツの78%に対してアルジェリアは22%。枠内シュートでもドイツが16本を放ち、4本のアルジェリアを圧倒した。
それでも、アルジェリアはインターセプト数でドイツの10回を大きく超える22回を記録。序盤から強烈な守備で相手を苦しめ、カウンターからゴールに迫るなど“番狂わせ”の可能性を匂わせていた。
グループリーグで輝きを放ったトーマス・ミュラーは、オプタ社によるパフォーマンススコア(守備、攻撃、ポゼッションの採点)で前半は-9点と完璧に封じられた。
さらに、この試合のマン・オブ・ザ・マッチはアルジェリアのGKライス・エンボリ。多くのピンチにもゴールを死守し、90分間で得点を許さない活躍を見せた。
しかし、キックオフから全力で走り続けたアルジェリアにとって、延長戦の30分間は長かった。さらに、ドイツがアンドレ・シュールレという才能をベンチに残していたことも敗因となった。
後半開始からマリオ・ゲッツェに代わって投入されたシュールレは、アルジェリアの足が止まった延長前半2分、ミュラーのクロスに合わせて先制点を奪取。さらに、同後半15分にはメスト・エジルの得点をアシストする活躍でドイツを勝利に導いた。