スペインからの独立を歌う国歌
チリ国歌について、少し触れておこう。この国歌は、宗主国スペインがナポレオンに侵略された19世紀初頭に起きたチリ独立戦争がモチーフになっている。自由への戦いで血を流した祖先たちを尊ぶ歌詞が付けられている。チリの第二戦はディフェンディング・チャンピオンであるスペインが相手だった。優勝候補を完封で破ったのは、勇敢な先祖たちの見えざる後押しがあったのかもしれない。
チリ国歌はブラジル国歌に共通して、自由・独立に対する熱い思いと、神から授けられた大地への賛歌だ。伴奏が終わり、アカペラがはじまるのは、最後の二行「自由のために死にゆく者の墓となることを。迫害されし者の安らぎの地となることを」の繰り返し部分である。
『チリ共和国国歌』
チリよ 汝の青空は澄みわたり
清らかなそよ風が薫るよ
花に満ちた大地は
エデンの園そのもの
白き雪を頂く雄々しき山は
神が与えし砦
汝をを包み込む 静かなる海は
輝ける未来を約束する
優しき祖国よ
チリの祈りを 受け取り給え
自由のために死にゆく者の 墓となることを
迫害されし者の 安らぎの地となることを
開催国ブラジルは優勝の「義務」がある。それとも大波乱が起こる?
日本時間の29日(日)早朝1時から行われる「ブラジル対チリ」。決戦の場になるのは、ベロ・オリゾンテにあるエスタジオ・ゴベルナドール・マガリャンイス・ピントである。クルゼイロECとアトレチコ・ミネイロのホームスタジアムは、この日、圧倒的なカナリア色と、負けじと押し寄せているラ・ロハ(赤)で埋め尽くされるだろう。
グループリーグのスペイン戦では、チケットを持たないチリサポーター200人が、試合を見たいがために報道エリアに侵入し、85人が逮捕されるという珍事が起こっている。ブラジル戦のスタジアムは警戒厳重になるはずだ。
そんな中で行われる試合前の国歌斉唱にはぜひ注目してみてほしい。両国の誇り高き国歌斉唱にもらい泣きするかもしれない。
【了】