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今大会話題のアカペラ国歌斉唱。実は発端はチリ。98年から続く伝統

今や名物となったブラジルのアカペラ国歌斉唱。伴奏が終わってもなお歌い続ける観客、そして選手たち。ところがこの現象、チリにも飛び火したとの話が!?『フットボールde国歌大合唱!』(東邦出版)の著者がその理由に迫る。

text by いとうやまね photo by Getty Images

ブラジル対チリは、前代未聞のアカペラ国歌合戦に?

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熱気溢れるチリ・サポーター【写真:Getty Images】

 決勝トーナメントに進む16か国が出そろった。残念ながら日本はグループリーグで敗退。それどころか、アジア勢が全滅してしまった。そのあたりの難しい話は専門家に任せるとして、決勝トーナメントのトップを飾るのは、開催国ブラジルと、もっか絶好調のチリ。そして偶然にもこの二カ国は、今大会『国歌斉唱』で話題になっているのである。

 ブラジルについては、一年前のコンフェデレーションズカップの時に、『国歌斉唱にみるブラジルの“本気度”』というコラムをフットボールチャンネルで書いているので、参照していただきたい。(https://www.footballchannel.jp/2013/06/29/post6008/)ブラジル代表と観客は、コンフェデ杯に続いてW杯でも、前奏を含めてまるまる二分の国歌を歌いきっている。

 そして、今回そこにチリ代表も加わった。チリもまた、1分半で唐突に切られる伴奏の後、客席と選手が国歌の続きを歌い続けるのである。中には感動のあまり泣きながら歌っている人もいる。そういえば、ブラジル代表のネイマールも毎回感動にむせび泣いている。この二カ国が対戦するのだ。胸が熱くならないはずがない。

アカペラ国歌の本家本元はチリ

 実は、チリ代表はブラジル代表よりも前からアカペラによる「歌い続け」をやっていた。

 ことの始まりは1998年のフランスW杯の大陸予選の時だった。当時チリ代表をけん引していたイバン・サモラノとマルセロ・サラスの『ササコンビ』。そのFWサラスが毎回短く切られてしまう国歌斉唱に対し、「国歌を切るなんて失礼極まりない、けしからん」と発言をした。

 そのことがきっかけになり、ファンが率先して伴奏が終わっても歌い続けるようになったのである。それを受けてか、本大会ではロングバージョンの国歌が使われた。当時のキャプテン・サモラノの熱唱をおぼえている人もいるかもしれない。もちろん、サラスも大満足だったという。

 時を経て、ふたたびショートバージョンの伴奏が使われるようになったわけだが、ブラジルの国歌斉唱が引き金になったのか、チリ代表も今大会アカペラを再開した。W杯が始まる前にチリサッカー協会は、『客席が歌い続けるので、国歌の時間を前もって調整してほしい』との要望を、運営側に出したそうだ。今のところ、両国国歌がかぶってしまうという事故は起きていない。

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