スタイルの探求
スタイルを構成するのは戦術的な合理性だけでなく、国民の嗜好にも関わる。例えば、アイルランドは戦法の合理性と国民の嗜好性がマッチしている点で、確固たるスタイルを築いているといえる。簡単にいうと、「魂」をみせやすいプレースタイルになっている。
アイルランドより戦力が上のイングランドは、それゆえに目標はアイルランドより上であり、そのための合理的なスタイルを取り入れてきた。だが、思ったほどの結果は出ていない。かといって本来イングランドに近い嗜好性からプレースタイルは離れていっている。勝つための合理性、国民の嗜好性の両面で中途半端な状態にある。
その点で、ある程度「日本らしい」プレーで完敗したコロンビア戦は、日本のサッカーファンがどんなスタイルを好むかを判断するうえでの試金石になるはずだ。
いかなる欠点もないオールマイティーなスタイルというのは、ごく一部のスーパーチームに限られる。ほとんどのチームには長所短所があり、長所が大きければ短所もはっきりする。勝ちパターンと負けパターンは表裏一体、好みもまたスタイルを構成する重要な要素なので、この一戦をファンがどう感じるかは興味深い。
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