W杯、オリンピックからセリエA、プレミア、ブンデスリーガ……。
世界のサッカーで公然と行われている『八百長』の実態を暴く!
八百長の仕組みと実態を丹念な取材を元に暴き出す、渾身のルポルタージュ
<本書はじめにより>
この本は学術的な本だ。スポーツを脅かす汚職の構造や機能を分析している。
センセーショナルなスキャンダルでもなければ、新たな汚職について暴露するものでもない。
登場する話から多くのヒントや詳細を知ることは出来るだろうが、本著の主眼は今日の八百長の内部にいる人々の動機や手段、方法について説明することだ。
しかしながら、あくまで一般読者に読んでもらうための学術的な本である。
明瞭かつシンプルに書くことを心がけた。私は違う世代の教授たちが長く築いてきた学術の世界にいるが、最近の学術世界は大変なうねりの中を漂っており、言葉が不明瞭で小難しくあればあるほど、深い考えだと受け取られることが多い。私の曽祖父は、説得力や複雑な考えをシンプルな言葉で説明する能力について教えてくれた。本著は、その精神で書かれている。社会学や犯罪学、統計学の知識がなくとも十分に理解できる内容になっていると願う。
第一章の【八百長の仕組み】は、スポーツ界に存在する八百長の形態を定義し、基本的な疑問を追求していく。
このセクションでは、いかに、どのようにしてこの題材を適切に学ぶかを明確に述べる。
そしてこの現象を理解できるように、いくつかの基本的な定義や概念を説明していく。
(本書「はじめに」より抜粋)
【目次】
■第一章 八百長の仕組み
chapter 1 八百長について学ぶ理由
chapter 2 八百長について研究する方法
chapter 3 調整と賭博
chapter 4 入り口、力、タイミング
■第二章 登場人物:汚職者
chapter 5 八百長をするのか、しないのか
chapter 6 確実性、フェイバーバンク、保証人
chapter 7 成功するための5ステップ
chapter 8 八百長を仕掛ける
chapter 9 八百長を命じる
■第三章 選手と審判
chapter 10 誰の意思で行うのか
chapter 11 間違った相手を信用すること
chapter 12 八百長への協力
chapter 13 八百長に走る選手
chapter 14 怠慢という罪
chapter 15 遂行の罪
■第四章 汚職のシステム
chapter 16 重症の汚職リーグ
chapter 17 八百長リーグと普通のリーグ
chapter 18 リーグの死
chapter 19 スポーツの死
chapter 20 八百長に勝つために
【著者】
デクラン・ヒル
ジャーナリスト、研究者。組織犯罪や国際問題を中心に調査報道を行う。これまでトルコの名誉殺人とフィリピンの記者殺人事件に関するドキュメンタリーで賞を受賞している。英国外務省チーヴニング奨学金でオックスフォード大学大学院に入学、プロサッカーの八百長に関する研究で博士号を取得。
【訳者】
山田敏弘(やまだ・としひろ)
ニューズウィーク誌編集記者。国際情勢や社会問題を中心に取材を行っている。著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、近著に『ハリウッド検視ファイル~トーマス野口の遺言』(新潮社)。訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)。