レーブの戦術改革がドイツを変えた
レーブの指導は実に明快だ。常に具体的なイメージや数字が提示される。
たとえば、プレーエリアについて。レーブはピッチを18の長方形に分け、各選手がどこのタイルを埋めるべきかを指示している。
レーブはこう説明する。
「ピッチの中には、秩序が必要。これは質の高いサッカーをするための前提条件だ。選手は基本布陣として、どこをカバーするかを理解しなければならない。すべての選手が、どこにでも動けると考えるのは間違いだ。
たとえばエジルはセンターラインから敵陣のペナルティエリアを動き、シュバイシュタイガーが自陣のペナルティエリアからセンターラインまでをカバーする」
こうやってゾーンを明確に分担することで、前線の選手が戻りすぎたり、逆に後方の選手が上がりすぎたりすることがなくなる。いくら魅力的なサッカーを志向すると言っても、無秩序になっては意味がない。創造性を発揮するためには“構造”が必要だ。
また、プレースピードについても具体的な数字を求めている。プレー時間(選手がパスを受けてから、パスを出すまでに要する秒数)を計測し、その短縮を目標に掲げた。その結果、選手たちのプレースピードは見違えるように速くなった。
「ドイツW杯のとき、チームの平均プレー時間は2.8秒だった。それがユーロ2008では1.8秒になり、2010年W杯では1.1秒にまで短縮できた。イングランド戦とアルゼンチン戦に限れば0.9秒。ドイツ代表のサッカーは、どんどん速くなっている」
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