崩せなかった堅守。足りなかった攻撃枚数
しかし、遠藤が加わった後半もギリシャの粘り強い対応を破り切れず、香川真司の投入でサイドの攻撃が活性化したものの、クロスに頼る傾向が強まった。クロス自体、えぐった状態から速いクロスをより出していければ得点チャンスが増したという主張は選手の中にもあり、83分に内田がグラウンダーのショートクロスを入れた場面などは、岡崎か香川がうまく飛び込めていれば1点だった。
相手にクリアされた直後に珍しく、ゴール前の選手たちに要求のジェスチャーを見せた内田は「点を取れるポイントというのが僕の中であそこだったので、ディフェンスの前に入ってきてほしいなと思った」と語る。
そうした質の部分を突き詰めれば確かに得点するチャンスはあったかもしれないが、ザッケローニ監督も会見で認めたように、全体の攻撃スピードが足りず、フィニッシュにもう1つ厚みが出ていなかったことは間違いない。やはり攻撃のカードを1枚前に増やしていくのが効果的だったのではないか。
攻撃的な選手としては柿谷曜一朗と齋藤学がいた。柿谷は飛び出し、齋藤はドリブルで局面を打開できるアタッカーだ。彼らを前線4人の誰かと入れ替えることで何らかの変化は出せるが、相手が1人少ないこともあり、ボランチを1枚削り、柿谷なら[4-1-3-2]、齋藤なら[4-1-4-1]にして前に厚みをかけることができたはず。
だが、ザッケローニ監督はどちらのカードも切らなかった。最後に吉田麻也を上げてパワープレーに出たことは批判の声も多く聞かれるが、その前に有効な手を打てなかったことに問題がある。その足かせとなったのが後半の頭に遠藤を入れたことだ。
【次ページ】遠藤を入れたことで采配の選択肢は少なくなった