「バイタルが少し、(本田)圭佑君がパスを交換したところぐらいは空いていた」
最後まで3枚目のカードは切られなかった。喜びを表すギリシャとうなだれる日本というコントラストが試合の内容をそのまま表していた。アップエリアから引き上げ、終了の笛をベンチで聞くことになった齋藤学は振り返る。
「(出場の)イメージは最初から持っているし、(香川)真司くんが交替で左に入っていたので、自分が出るなら右かなと思っていた」。その言葉が説得力を持たせるのは試合の状況に関する彼の描写だ。
「逆に退場しない方がスペースもあったかなと思っていたけど、向こうの役割がしっかり徹底された時の最後の粘りや強さはすごいっていうか。ただバイタルが少し、(本田)圭佑君がパスを交換したところぐらいは空いていたから。自分が入るならそこというか、どっかで崩せたらなと思っていたんですけど」
ベンチから戦況を見守り、その中で自分が入った時にどうすべきかを明確にイメージする。代表選手なら当然のことではあるが、その当然のことをしっかりやりながら出番を待ち続けた。
確かにギリシャは10人になってからも堅実で粘り強く、ポジション取りにミスが無かった。こうした状況で守ることに関しては欧州のどのチームより優れている。タイミング良く飛び込もうとしても、そこを消されてしまう。そんな展開が続いていた。
だからこそ終盤はパワープレーより前にドリブラーを入れることが有効だったのではないか。「普段通りのスピードあるプレーはできなかった」とザッケローニ監督が語る状況なら、その特徴に特化した選手を入れる効果は大きかったはずだ。