単調なクロス。足りなかった中を崩し意識
長友佑都は両チーム最長の11.166kmを走った。何度も左サイドをえぐったが、そこからのクロスは単調で簡単に中で跳ね返された。彼自身、DFを一人かわした後でさらにドリブルで仕掛ける、あるいはマイナスのパスで攻め直すという意識が必要だった。アーリークロスでもない限り、上背で上回る相手には中で勝てない。
味方のサポートも少なかった。攻撃陣がペナルティエリア内に集中していたことが多く、クロスを上げるしか方策がないような場面も多々あった。FIFA公式サイトによると、日本は全体の44%が左からの攻撃(真ん中が24%、右が32%)。元々左はストロングポイントだったが、長友も任せっきりで、中央で複数の選手が同じ動きをしてしまった。
相手が引いてくる場合、素早く崩す展開はなかなか訪れない。そうなれば、何度も攻め直しをして守備陣が乱れるのを待つしかないのだが、そうした動きは少なく、淡白な攻撃は実を結ばなかった。
ペナルティエリアでボールを受けた回数はあまりにも少ない。香川が1回、吉田麻也が1回、大久保が2回、岡崎が1回、本田圭佑が1回、内田篤人が1回。大迫勇也は0回だった。
押し込んでいるように見えて、中を崩す意識は足りなかった。例えば、香川が裏へ飛び出した内田にパスを送り、大久保の決定機を迎えたシーン。あのようにDFラインを乱す攻撃をもっと仕掛ける必要があった。
加えて言えば、前述のデータを見れば、後半のパワープレーで吉田が競り勝てたのは1回だけということになる。コートジボワール戦で機能しなかったこの戦略をまたも指揮官が選択したのは迷走としか言いようがない。
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