今回は1つステージが上がった戦い
オシムが掲げた「日本化」を岡田流に解釈した結果、「日本化」はより先鋭化し、ポゼッションと前線プレスをセットにした戦法を極めようとした。ところが、本大会直前にパスワークの軸となる中村俊、遠藤が負傷の影響でパフォーマンスが低下。岡田監督は阿部勇樹をアンカーに置く守備型のカウンター戦法へ大きく舵を切った。
戦術変更は当たり、オランダに次ぐ2位でグループを突破、パラグアイにPK戦で敗れたものの、開催国だった02年以来、W杯で2勝することができた。
中澤佑二と闘莉王のセンターバックコンビのスピード、長谷部誠&遠藤の守備力を考えると、当初のやり方はいずれ破綻していた可能性が高かった。偶然だが、ぎりぎりのタイミングで続行不能になったのはかえって幸運だったかもしれない。
アルベルト・ザッケローニ監督は、岡田前監督のW杯以前の路線を引き継いだ形で、攻撃型のチームを作った。
細かな約束事の導入という点では、トルシエ監督に近いタイプといえる。ただ、トルシエとは比較にならないキャリアを持つ熟練監督だけに、協会や選手と摩擦を起こすこともなく本大会を迎えようとしている。また、02年よりも選手がはるかに成熟していた。
これまでの4大会は、いかに「世界」との差を縮めるか、あわよくばグループ2位で通過を狙うという立場だった。しかし、今回は日本も「世界」の1つとしてステージに上がる。守備力に不安はあるが、それ以外は何らコンプレックスを抱く要素がない。選手の市場価値、世界標準の戦術、かつてよく言われた経験値、何も劣っていない。
強豪国のように「悪くても2位通過」という余裕こそないものの、「良ければ1位通過」を狙える位置にいる。
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