フィニッシュの導火線、かつ「5人目の刺客」
まさに、堂々めぐりである。この迷路の先に『遠藤ジョーカー案』が浮かび上がってきたのではないか。苦渋の選択、妥協の産物と言っていい。しかしながら、物は考えようである。百戦錬磨のコンダクターを「使いたいときに使う」メリットは、決して小さくないはずだ。実際、オランダ、ベルギーとの連戦でも、効果のほどは実証済みだろう。
遠藤をサブに回す「理」が攻守のバランスにあるとするなら、遠藤の途中投入はまさにバランスの針を「攻」に振る行為だ。1点をめぐる攻防の勝負どころで、1点を追いかける敗退局面で、フレッシュな状態にある遠藤をフルに使えることになる。
相手の出方にもよるが、互いに万全の状態で臨む前半の攻防においては、体力や走力の及ぼす影響が色濃い。いわゆる「肉弾戦」に傾きやすい時間帯に起用して体力を消耗させてしまうよりも、敵の消耗がはじまる後半から使う方が、技術や知力といった遠藤の持ち味をより活かしやすいはずだ。
しかも、ベンチから戦況を見つめることで展開の見極め、味方の好不調、敵の弱点といった、あらゆる情報がクリアな状態で遠藤の頭脳に入力されていく。この「知の最大化」が、日本に大きなアドバンテージをもたらすのではないか。敵陣攻略の糸口と見定めた人や場所、時間帯への「選択と集中」が、遠藤のタクトから始まることになる。
途中出場で際立つのはアタッキングゾーンへの積極的な侵入だろう。4人のアタック陣に絡む「5人目の刺客」へ転じたときの遠藤は、まさにフィニッシュへの導火線だ。勝負をかける局面で最重要任務に従事しやすくなるのは、遠藤を切り札に使う最大の「利点」と言っていいかもしれない。
【次ページ】日本版リベラ。ジョーカーとしての遠藤