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すべては国の未来のために――。スター揃いのコートジボワール代表。アフリカ特有の内紛が起こらない理由

text by 清水英斗 photo by Getty Images

サッカーが終わらせた内戦。ドログバの呼びかけ

 ラムーシ自身も、コートジボワールの国民から人気のある指揮官ではない。監督としての実績がないこと、さらに攻守のバランスを重視した“退屈”と揶揄される戦術志向も相まって、解任を望むファンの声は大きかった。

 このような状況は、ゾコラに見られる監督への反逆を助長しやすいものだが、このチームはそれを乗り越えて、ブラジルの地に立っている。それはなぜか?

 コートジボワールには、さまざまな争いを越えて、一つにならなければならない“理由”があるのだ。

 1990年代から、コートジボワールでは北部と南部の間で内戦が勃発していた。

 ブルキナファソなど隣国からの移民が多い北部と、“純粋コートジボワール主義”を掲げる南部による民族の対立。さらに宗教面でも、南部はキリスト教、北部はイスラム教という信仰の違いが存在し、これらも対立の要因となっていた。

 そして2000年頃から、北部で反政府勢力が武装蜂起すると、コートジボワールは自国の中で多くの血が流れる非常事態に突入してしまう。

 長年にわたって小康状態と戦闘が繰り返された内戦に対し、終止符を打ったのがサッカーのコートジボワール代表だった。チームは南部出身のドログバ、北部出身のトゥーレ兄弟など、さまざまな地域から集まった選手で構成されている。

 2005年、アフリカ予選を突破して念願のW杯初出場を果たすと、試合後、ドログバはカメラに対してひざまずき、歓喜に湧く国民に対してメッセージを送った。「僕たちはさまざまな民族が共存してプレーできることを証明しました! お願いします、内戦をやめてください! 選挙をしましょう」

 そしてコートジボワールの内戦は一時停戦を迎え、2007年には北部と南部の間で和平協定が結ばれた。サッカーが内戦を終わらせた、と言っても過言ではない出来事だ。

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