実はW杯反対の意見が多いのは貧困層ではない
貧困層に対しては現在の政権党、労働者党がボウサ・ファミリアと呼ばれる生活給付金を導入。彼らの現政権に対する不満は比較的少ないと言っていいだろう。
そんな地域間格差は、W杯の開催の是非を問う世論調査にも現れている。6月上旬に発表された調査会社ダタ・フォーリャによる世論調査によると、貧困層が多いブラジル北部ではW杯の開催に賛成が69%、反対が19%、やはり貧困地域の北東部でも賛成が62%、反対が25%だったのに対して、富が集中するサンパウロなどがある南東部では賛成が44%、反対が43%。イタリア系など白人が多く生活レベルが高い南部では賛成が38%、反対が39%になるなど対照的な結果になった。
かつて、ブラジルで行われていたデモと異なり、ネットなどを通じた横のつながりで広がった中流層の怒りは、便乗して略奪を行う集団の合流も呼び込み、ブラジル大会の開催中も懸念されている。
一方で、現在進行形でW杯の開幕を脅かしていたのが、日本でも多数報道されている公共交通機関や、警察官ら公務員のストだ。
サンパウロ市内を走るメトロは一日に450万人が利用する交通機関の大動脈だが、5日から5日間にかけてストライキを実施。10日には全面再開したものの、W杯開幕戦が行われる12日には再度のストライキが行われる可能性がある。
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