欧州最強の2トップ
元日本代表監督イビチャ・オシム氏の故郷として知られるのは、ボスニア・ヘルツェゴビナである。あのズラタン・イブラヒモヴィッチの出身地でもあるこの国は、旧ユーゴスラビア圏でも特に優れた才能を輩出していると指摘されることが多い。
しかし、である。この代表チームが見せるサッカーについてはあまり語られていないのが現状だ。欧州のトップクラブで活躍する選手が多く、日本での知名度も決して低くはないはずだ。
民族ごとに協会が分裂し、協会存続の危機をあのオシム氏が救ったことも大きな話題となった。それでも、チームとしての彼らの素性は未だ大きな謎に包まれており、彼らの紹介文には「W杯初出場」といった枕詞ばかりが目立っていた。
では、ボスニア・ヘルツェゴビナ代表とは一体どんなチームなのだろうか? 今回はブラジルW杯唯一の初出場国であり、日本でも密かに注目されている同国にスポットを当て、その正体に迫る。東欧きってのタレント集団は、調べれば調べるほど破天荒な部分の見つかる“ヤバい”チームだった。
「欧州で最も破壊力ある2トップを擁する代表チームは?」と問われれば、私は真顔で「ボスニア・ヘルツェゴビナ」と答える。このチームの“ヤバさ”を語るには、まず2人のストライカーに触れる必要があるだろう。
ボスニア・ヘルツェゴビナの2トップを組むのは、エディン・ジェコとヴェダド・イビシェヴィッチである。08-09シーズン、長谷部誠も所属するヴォルフスブルクで26得点とゴールを量産し、史上初のブンデスリーガ制覇に大きく貢献したジェコ。
現在はマンチェスター・シティで背番号10を背負い、抜群の決定力でその名を轟かせる。一方、ジェコには多少ネームバリューは劣るが、イビシェヴィッチもかなりの実力者である。同シーズン、昇格したばかりのホッフェンハイムでリーグ前半戦17試合18得点と爆発し、ドイツ中の話題を掻っ攫った。
その後もブンデスリーガで安定した結果を残し、過去9シーズンで87得点をあげている。いずれもフィニッシャータイプのFWだが、この2人にまつわるエピソードがいろいろとぶっ飛んでいるのだ。