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自国開催W杯での優勝は64年前のリベンジ。ブラジル国民が決して忘れない“マラカナンの悲劇”とは

text by 沢田啓明 photo by Getty Images

「今回のW杯で「『マラカナンの悲劇』を払拭しよう」

自国開催W杯での優勝は64年前のリベンジ。ブラジル国民が決して忘れない“マラカナンの悲劇”とは
『マラカナンの悲劇:世界サッカー史上最大の敗北』(新潮社)

 この敗戦がブラジル国民に与えたショックは大きく、「もう二度とフットボールの試合を見ない」、さらには「神様が信じられなくなった」という声まで聞かれた。ミスを犯したバルボーザらは、生涯に渡って糾弾された。

 しかし、この敗戦は実はブラジルのフットボールにとって大きな意味があった。以後、美しくプレーするだけでなく勝負にも徹底してこだわるようになる。

 国際大会でどれだけ勝とうと、完全に満足することはない。それは、自国開催の大会で味わった悲惨な敗北を決して忘れられないから。あの敗戦があるこそ、現在のブラジルのフットボールの栄光がある、と言っても過言ではないだろう。

 現在のブラジル人のほとんどは、「マラカナンの悲劇」をリアルタイムでは体験していない。それでも、この出来事は国民的な記憶として語り継がれており、知らない者はいない。

 ブラジル国内には、「今回のW杯で「『マラカナンの悲劇』を払拭しよう」という声がある。ウルグアイと対戦することがあれば、ブラジルでは「『悲劇』のリベンジ」を、ウルグアイでは「『奇跡』の再現を」という声が噴き上がるはず。

 また、ブラジルが決勝まで勝ち進みながら敗れるようなことがあれば、仮に相手がウルグアイでなくても「第二のマラカナンの悲劇」と語り継がれることになる。

 はたして、ブラジルは64年前のリベンジを果たせるのか……。決勝の舞台は、ブラジルのフットボールの聖地マラカナン・スタジアムである。

【了】

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