改めて聞く、フラット3とは?
――当時のトルシエ監督が目指していたサッカーを教えてください。
「今で言えば鳥栖、鹿島も近いかな。比較的ダイレクトなサッカーですよね。無駄な手数はかけない。それでいて要所要所に技術があり、戦術眼の高い選手がいるので、いろいろなところに違いを見出せる。
緩急というよりは、シンプルに早く攻めるサッカーだったように思います。攻守の切り替えが特に早くて、DFラインは下がらない。ということは中盤の僕らも休めないし、前線も常にプレッシャーを掛け続けなければならなかった」
――トルシエ監督といえば、代名詞は『フラット3』ですよね。
「『フラット3』のいいところは、DFの3人が僕らの働きやすい空間を作ってくれるんですよね。ラインが深ければ深いほど、僕ら中盤も前線も間延びしてくるので、そうすると走る距離が長くなるし、相手が快適にプレーできる空間も広くなる。
『フラット3』がオフサイドを取ってくれることで、相手の攻撃もストップするので、それが生命線というのは真実。逆に考えると、『フラット3』が機能するために、僕らは常にボールに対してアタックし続けなければいけない。これを築くのは本当に難しい。選手だけでは絶対にできない。
だから、徹底という意味では、すごかったですよ。誰であろうと、トルシエ監督は容赦しない。チームとしてもちろんやるべきことがはっきりしていて、それを可能にできる選手たちが揃っていた。
あとは、監督が変に誰かを特別扱いせず、全員をフェアに見ていたことで競争があったこともよかったですよね。環境という意味においては、僕のキャリアの中でもベストでした」