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日本代表 10年前

今なお記憶に刻まれる2010年ワールドカップ南アフリカ大会。熱く波乱万丈だった日本代表の軌跡

text by 藤江直人 photo by Getty Images

記憶の封印を解いた中村俊輔

 最後まで攻め手を欠いた不完全燃焼の思いは、岡田監督からバトンを受け継いだイタリア人のアルベルト・ザッケローニ監督のもと、「どんな状況でも自分たちの哲学とアイデンティティーを貫く」という不退転の決意へと昇華する。アイデンティティーとは、日本が主導権を握り続ける攻撃的なスタイルに他ならない。

 冒頭で記した南アフリカの記憶の封印を、俊輔が自ら解いたのは5月10日。ホームの日産スタジアムでサガン鳥栖に完敗を喫した直後の取材エリアだった。昨シーズンの2位から一転して、リーグ戦で下位をさまよう現状に4年前の日本代表をだぶらせたのだろうか。

 ACLでも日本勢で唯一、グループリーグで姿を消すなど、シーズンの3分の1も消化していない5月にして目標を見失いかけている雰囲気に、危機感を募らせたキャプテンはこんな言葉を残してもいた。

「W杯による中断期間に入ってバラバラになる前に、選手を一度集めたほうがいいのかな。やっぱり話すことが一番だから。人の前で思いを吐かせて、責任を持たせるのはいいことだからね」

 5月18日に敵地・等々力陸上競技場で行われた、川崎フロンターレとの中断前最後の一戦は果たして、マリノスが3対0で快勝している。8日の間に俊輔が何らかのアクションを起こしたことは容易に察しがつく。

 2010年6月を熱く彩った波乱万丈の軌跡は、南アフリカの地で魂をほとばしらせた男たちの脳裏にいまもなお鮮明に刻まれている。

【了】

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