「やるからには本番前の試合だろうが、練習試合だろうが勝ちたい」
「後ろから低い声で『スルー、スルー』って聞こえたから。ホントは時間も迫っていたので、この前の試合(得点したキプロス戦)じゃないですけど、点を取ろうかなと思っていた」
内田篤人がそう振り返るのは後半15分の同点シーンだ。岡崎がカウンターから鋭く持ち上がったが、同時に左サイドバックのディアスが付いていったことで、内田の前方に大きなスペースが出来ていた。
そこから素早く中央方向へと駆け上がり、ペナルティエリア内に侵入。香川のパスを受けた本田のクロスに合わせようとしたが、咄嗟に来たボールをスルーし、すぐ後ろに上がっていた遠藤がゴールを決めた。
「噂では60分って聞いていたんですけど、俺がもうちょっとできそうだからって言って、お願いしました。45分やって次70。明日どういう張りとかリバウンドとかが来るかってのもありますけど、いいんじゃないですか」
まだ負傷個所の右太ももと相談しながらのプレーが続くが「やっぱりやるからには本番前の試合だろうが、練習試合だろうが勝ちたいのはあるから」という言葉の通り、勝つために何ができるかを優先させるのが内田の基本スタンスだ。
必要ならバランスを取るし、また必要なら攻め上がるといった具合だが、キプロス戦とコスタリカ戦に関しては“試運転”ながら、ある種の挑戦を楽しんでいるように見える。
「嘉人さんは(大久保)右サイドが初めてと言っていたけど、ボールを持てるし取られないから、上がるタイミングもある」と内田。基本的には大久保を後ろからフォローするポジションを取りながら、タイミングを見て駆け上がった。
「(左が今野)というのもあるし、自分がどれだけやれるのかなっていう部分もある」。直接のクロスこそ限られたが、内田の走りによって5バックのコスタリカは守備を開かざるをえず、しばしば中央に空間を生み出した。