Jリーグの試合で、『表現力』を含めた『マンマネジメント』を駆使
「例を挙げていうのであれば、(世界のトップレフェリーとは)『表現力』の部分が大きく違うと感じていました。スタイルが違うのです。日本人はきっちりとした中で、素早く手際よくパっとやりたい。ただ、彼らはゲームを切る所はとにかく切ります。落ち着くまで待つ。イングランドのプレミアリーグなんかはわかりやすいですよね。
イタリア人のロベルトに、『僕と君では何が違うのか?』って具体的に聞いたのです。彼は『スキル(動きの量、質、読み)などは何もかも同じだ。違うのは、俺はイタリア人選手たちの気性をコントロールする事を一番大事にしている点だ』って言っていて。それは、僕が感じていた違いなんですね。
日本人には日本人の気性があって。荒いのではなく、(判定に対して)細かいというか。欧州は(判定を審判に)委ねてくれているから、大枠でしっかりやってくれればOKという所がある」(西村氏・2011年プロフェッショナルレフェリー合宿より)
西村氏は、この『表現力』を南アフリカW杯以降、重視するようになった。
『表現力』にトライするためには、選手の協力も必要になる。互いにリスペクトする関係がなければ、『表現力』は意味がないものになってしまう。
たとえば、試合中に選手に行う『注意』。審判員がいくら『注意』しようとしても、選手が無視すれば、『表現力』を使うことは出来ない。カードの色で選手をコントロールする選択肢しかなくなってしまうのだ。Jリーグでも、そういった対立関係になってしまう試合があった。
それが、南アフリカW杯で結果を残したことやJリーグで積み重ねた信頼から、協力関係へと変わった。
西村氏は、Jリーグの試合で、『表現力』を含めた『マンマネジメント』を駆使し、ワンランク上のレフェリングに到達する。FIFAもそんな西村氏を高く評価し、FIFAクラブワールドカップ2010の決勝を任せた。