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【W杯観戦者必見】24時間のフライト、ブラジル行きは本当に大変か?

text by 田崎健太 photo by Kenta Tazaki , Getty Images

伊良部秀輝との出会いを実現させた“経由”

 また、経由地が新たな出会いとなることもある。

 5月頭、ぼくは元ヤンキースの投手の故・伊良部秀輝さんを描いた『球童 伊良部秀輝伝』(講談社)という本を上梓した。伊良部さんを取材するきっかけとなったのは、サンパウロに向かう途中、ロサンゼルスに滞在したことがきっかけだった。

 たまたまロサンゼルス在住の友人が、伊良部さんの事務所の人間と知り合いだった。一度、食事しましょうということになり、伊良部さんの話になった。

 ぼくは以前から伊良部秀輝という人間に興味があった。そこで、彼と会ってみたい、と相談してみた。そこから話が進み、約半年後の2011年5月にロサンゼルスで伊良部さんにインタビューすることになったのだ。

 伊良部さんは想像していたのと違い、知的で優しい男だった。ぼくは「ちょくちょくロスに来るので、また話を聞かせてくださいね」と約束して別れた。

 しかし――。

 インタビューの約2ヶ月後、伊良部さんは自らの命を絶った。ぼくは彼にきちんと話を聞いた最後の人間となった。死後、彼について多くの記事が書かれた。しかし、そこからはぼくが感じた、伊良部さんの姿が感じられなかった。そこで死後約1年経ってから、本を書くことにした。

 ぼくがブラジル行きの経由地にロサンゼルスを選ばなければ、この『球童 伊良部秀輝伝』は存在しなかった。

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