その強国のスタンス
キプロス戦もそうした流れの中にある。
相手は決して弱いチームではない。粘り強い守備ができてフィジカル的にも強健な、欧州の小国らしい代表だ。ただ、決して強豪国でもない。だからこそ、日本は「W杯直前の試合だから無様な試合はできない」といった気負いから、この一戦に向けて特別に調整するといったこともしていない。直近の鹿児島合宿ではフィジカル面を厳しく追い込むような練習を重ねており、コンディションは最悪に近い状態のようだ。率直に言って、タフなファイトは期待できないだろう。いわゆる「良い試合」になる可能性は低い。
だが、それでいい。それがザッケローニ監督の立ち位置だ。あくまでこれは調整試合。自分たちと同格未満の相手と試合を通じた「調整」を経て、本大会に臨む。逆に言えば、特殊な戦術の採用や、強国との対戦で自信を掴むといった精神的ブレイクスルーがなくとも、「普段のサッカーを普通にする」ことができれば、十分にW杯で戦えるという自信をザッケローニ監督が持っているということでもある。
良くも悪くも、今回は日本が「強国のスタンス」で臨む大会となった。まだそこまでの実績がないことは明らかだが、実力もないかは見えないところ。こればかりは、やってみないと分からない部分もあるし、やってみる価値はある。そう思えるだけのメンバーがそろったのは確かだ。挑戦するからこそ、見えてくるものもある。
キプロス戦の内容については率直に言って期待していないし、観衆も変な期待感は持たずに落ち着いて観たほうがいいと思う。ただ、ここから本大会に向けて日本代表が見せるチューニングについては興味がある。「強国のスタンス」は果たしてどう作用するのか。この挑戦の成否は、4年後、8年後の日本代表にも大きな影響を及ぼすに違いない。
【了】
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