シドニー、新たな日本人選手獲得の可能性も
小野は、1年7ヶ月の濃密な時間を過ごしたウエスタン・シドニーの地を既に離れている。Aリーグのファイナル・シリーズこそ2年連続でグランド・ファイナルで涙を呑んだが、ACL広島戦の勝利でチームを初のACLでベスト8に進めるのに貢献。
初年度には創設1年目でのシーズン優勝の原動力となった。そのような大きな成果を残した小野は、相思相愛のクラブを惜しまれながら去っていった。
WSWは、小野と共に戦った多くの主力選手の退団でまったく別のチームに変わっていく。クラブのある幹部は、筆者の問いに日本人獲得の可能性を否定せず、逆に冗談半分でお勧めを聞かれたので、幾つかの名前を個人的に推薦しておいた。WSW以外のAリーグのチームでも、小野の成功を目の当たりにして「2人目の小野伸二」を狙う動きがあるとも聞く。
Aリーグ、そして豪州サッカー界には、小野が与えた強烈なインパクトのその残像が消えることはない。横縞でなく縦縞の赤黒のユニフォーム姿を目にして初めて、小野がいなくなったことを実感するのだろう。小野は去ったが不思議と喪失感がないのは、「またいつか戻ってきたい」という希望を直接聞いたからだろうか。
小野伸二という類稀なる才能の持ち主のプレーをこの国で堪能できたことは、多くの豪州で暮らす日本人にとっても得難い経験となった。小野に触発されてサッカーに熱を入れる日系の子供らも多い。そんな現地でのこれからも残る多大な影響力への感謝の念も込めて、この小野伸二へのトリビュートを現地のファンが書きこんだ言葉で締めくくりたい。
“Shinji our true legend, arigatou and see you again. You are forever our hero. ”
【了】