「ただただ誰よりも多くトレーニングを重ねる以外に他の方法はない」
――今、君はミランのプリマベーラを率いているわけだが、あのFWインザーギしか持ち得なかったと言っていいはずのストライカーとしての天賦の才、動物的な嗅覚とゴールへの執念などなど、それを今の若い選手たちにどう教えているのか? 決して簡単なことではないと思うのだが……。
「天賦の才という言葉、これが果たして本当に正しく使われているのかどうか。このこと自体を時として疑ってみることも大切なんじゃないかと、そんな風に僕は思うんだよ。つまり、誤解を恐れずに言えば、この僕には君が言うような“天賦の才”があったわけでは決してないんだよ、と。
確かに世界のサッカー史上にはまさにその才能を神に与えられたとしか言いようのないマラドーナを初めとする選手たちが何人かいるのは事実なのだけれど、まあ、彼らは文字通り別格だからね。
この僕のような決して上手くはない“平凡な”選手が上に行くにはとにかく、そしてその上のレベルに留まり続けるためには、それこそ平凡な答えで申し訳ないのだけどね、ただただ誰よりも多くトレーニングを重ねる以外に他の方法はなかったんだよ。
点を獲るための技術を徹底的に研究しては、それをトレーニングの場で実践してみる。でももちろんそう簡単には上手くいかない。なのでもう一度、またもう一度、さらにもう一度と繰り返し繰り返し練習を重ね続けていく。
当然のことながら時には悩みながら、もがき苦しみながら、それこそ失敗だらけの毎日を送りながら。足首の故障に長く苦しんでいた当時もそう。アントウェルペンの砂浜で走り込みを続けながらも僕はいつだってゴールのイメージを頭の中で描き続けていたんだ(編注:2004年、怪我をしたインザーギはベルギーで手術を受け長期離脱を強いられた。ここではリハビリのことを指している)。
つまり、あくまでもこの僕の経験に照らして言えば、“天賦の才よりもむしろそれを持ち得ないからこそ重ねる努力の方が多くの結果をもたらしてくれる”。そうとも言えるのではないかと」